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Delphiはじめて物語


第2章 昇天

(続き)
 この当時、私はパソコンをしながらよくカップラーメンを食べていた。そのため、パソコン上で動くラーメンタイマーがあったらいいなーと思っていた。Vectorなどでラーメンタイマーを捜したのだがどれも一長一短、なかなか私の希望するものはなかった。そんなときふと思った。「そうか、自分で作ればいいのか」と。今となっては当然のごとく思いつくが、Delphiを使い始めた初期は、覚えることに頭がいっぱいでとても自分で作ろうなんて考えもしなかったのである。

 そこで私は、Delphiの(私にとっての)バイブル「はじめてのDelphi」を手にした。ここに簡単なタイマーの作り方が書いてあったので、それを参考にして開発に着手した。私ははじめ、3分、4分、5分をラジオボタンで切り替えて使うタイマーを考えていた。しかしそれではおもしろくない。それ以外の時間も登録しておいて、お風呂のタイマーやその他の用途に使える汎用的なタイマーの方がいいと考えたのである。ここに私の第一の作品、「登録タイマー」の構想が完成した。

 しかし、登録タイマーの開発は困難を極めた。現在の登録タイマーは登録場所にリストボックスを使っているが、当初はラジオボタンの発想から抜け出せず、登録場所にラジオボタンを使った。簡単にいえば3分、4分、5分のラジオボタンの数を確か6個程度に増やして(なぜ「確か」なのかは後に分かる)、時間の登録・削除を行えるようにした。今ならラジオグループを使えばいいと分かるが、当時は使い方が分からず、ラジオボタンを一つずつ使っていた。しかもご丁寧に、登録時間の小さい順にソートさせようと試みたのだから、それはもう、たいへんなものだった。

 知識の無さを有り余る時間でカバーし(就職活動しなさいって!!)、登録タイマーはようやく完成した。いやー、良かった。あとはシェアウェアとしてインターネット上に公開するだけだ。そんなとき耳寄りな情報を雑誌からキャッチした。なんとプロバイダに払う接続料金がただでよい、というお話である。そのプロバイダこそ、"ASCII Internet Freeway"(今はつぶれたためありません)。お金のない私は、これしかない!と思い、早速申し込もうとしたのだが.....。

 なんと申し込みにはクレジットカードが必要というではないか。そんなもの持ってないぞ。マスコミなんかでもカード破産が取りざたされていた時期だったので、作成するのはかなり怖かった。しかし、シェアウェアという野望のためだ、仕方ない。一念発起してこれまた手数料も年会費もいらない、郵便貯金のジョイントカードを作った(郵便貯金のカードとVISA/セゾンカードが一つにくっついたカードのこと)。

 しかしここでも悲劇が起こった。発行に1ヶ月も待たされたのである。こうしているうちにもシェアウェアとしての儲けが無くなっていく....(こういうのを「捕らぬ狸の何とやら」と言います)。と言うわけでやっとカードが発行されてインターネットが正式に利用できるようになったのが去年の8月上旬のこと(それまではInter-Qを使っていたのだが、使用料金がダイアルQ2で電話料金の明細に載ってしまうので親にばれた)。さて、公開するぞ、と思ったのだが、大事なものがまだ無かった。それはメールアドレスである。メールアドレスがなければ、Vectorなどに公開することは事実上不可能なので、はやいところ欲しかった。しかーし!!ここでもまた悲惨な出来事が起こった。なんとメールアドレスの発行に1ヶ月も待たなければならなかったのである。都合2ヶ月、私のイライラと皮算用は日に日に増していった。

 そしてパソコンに住む悪魔は、まだまだ私を許してはくれなかった。あれは8月の中旬、フロッピーから文書を読み込もうとしたときだった。正常に読み込まれず、再起動する羽目になったときから事件は始まった。パソコンを起動するときにハードディスクを認識しなくなる症状が出始めたのである。はじめの頃は「大したことないや」と高をくくっていたのだが、日を追うごとに認識率が低下し、9月上旬、ついにハードディスクは昇天した。

 それから1ヶ月後、修理センターから戻ってきた我が愛機は、今までに学習した記憶をすっかりなくして、真新しいハードディスクを装着していた。私が苦労して作った「登録タイマー」は見る影もなかった。(続く)

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